200年前のアパート?荃灣駅前にある「三棟屋博物館」

今回紹介する場所は、MTR荃灣(チュンワン)駅から徒歩5分の場所にある歴史的建造物、三棟屋博物館。18世紀に建てられた豪農の家が当時のままで現存する、とても珍しい建物です。

日本風にいうと民家と呼べばいいのでしょうか。それにしては、大変立派な住まいです。

現在は史料館として一般公開されており、香港に農地が広がっていた時代の、人々の生活を垣間見ることのできる貴重な建物です。

チャンさん一家のお屋敷

簡単にいうと、「三棟屋」は、18ー19世紀にかけて荃灣エリアで農業を営んでいた陳(チャン)さん一家のお宅。

陳一家は元々、中国の福建省の出身の客家民族で、徐々に南下し、18世紀の中頃、荃灣のこの地を一族の住処とします。

その後、次々と周辺の未開発地を耕していき、農地を拡大させます。

緑の場所が陳一家が所有していた農地。

上の地図を見ると、陳一家は広大な農地を治める豪農だったとうかがえます。どおりで、家も立派なこと!三棟屋の建設が行われたのは、1786年。正確な年号がわかっているのも、凄くないですか!

ちなみにこの家の建っている場所は、かつては正面に海を見渡せる高台(現在では埋め立てなどが行われ、あたりに海の気配はありませんが)。そして背後には小さな丘があります。中国の古い風習によると(風水?)気の流れが良い、最高に縁起のいい場所!

そんな運気の上がる一等地にあった豪邸が、三棟屋なのです。

客家のコートヤード型集合住宅

陳一族は、「客家」と呼ばれる人々。客家は漢民族の一支でありながら、独自の言語や文化を持っており、彼らの家も客家民族の特徴を色濃く残しています。

客家の家といえば、福建省の山岳地帯にある円形の集合住宅を頭に浮かべる人が多いと思います。

「福建土楼」と呼ばれる、世界遺産にも登録されている伝統的建築(写真参考)

このような住宅が、福建省には2万棟も残っているのだそうです。基本的に一つの建物に同じ家系の一族が住んでおり、一つの村を形成しています。

4階建程度の建物の内部には中庭(コートヤード)があり、その中心に先祖を祀る祖廟があります。まるで、ドーナッツのような形態。

建物の外壁には窓がほとんどなく、その代わり、各部屋は建物内部の中庭に開けています。このような独特な形態の家に住んでいる理由に、敵から一族を守るという理由があったそうです。外に開口部が極めて小さいので、外敵が侵入してくる隙がありません。

さて、それを踏まえて、荃灣にある陳一族のお宅を見てみましょう。

陳一族の家は円形ではありませんが、白い無機質な外壁に開口部はほとんどなく、とても閉鎖的な建物です。

建物内部には大小様々は中庭があり、各部屋は内側に向いています。すなわち、三棟屋は客家の伝統を継承するコートヤード型の住宅なのです。

陳一族は福建省から移り住んできたよそ者。近辺に住んでいたであろう他の部族や盗賊から身を守るために、このように閉鎖的な住宅を建てたのでした。