今さら太平山街 〜歴史〜

街歩きやカフェ好きの人にはお馴染みの太平山(Tai Ping Shan)。骨董街で有名なハリウッド通りの裏側に位置し、太平山街を中心にマンモーテンプル(文武廟)から東華ホスピタルまでのエリア一帯のことを指します。地下鉄の上環駅からちょっと離れているので、そこまでアクセスがいいとはいえませんが、いつも観光客や地元の若者、エクスパットなど国際色豊かな人々で程よく賑わっています。

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昔ながらの低層の唐楼が並ぶ街なみは、車も少なく、歩くのに最適な環境。道沿いにオシャレなカフェやブティック、ギャラリーなどが並び、香港島とは思えないほど、ゆっくりとした時間が流れています。

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僕にとって太平山街は、「週末、コーズウェイベイやTSTなどの人混みの中を歩く元気ないけど、家でじっとしてはいたくない〜」、そんな時などに訪れる場所。素敵な裏道や緑が多いこのエリアは、何の目的もなく来ても、ストレスなく散歩できる場所として重宝しています。

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今ではPOHO(SOHOに対抗して)なんて呼ばれていて、とてもボヘミアンでリラックスした雰囲気の漂うこのエリアですが、その歴史はちょっと衝撃的。

太平山は、元々、1840年代にイギリスが香港を植民地化した時に、中国人専用に設けられた居住地区でした。西洋人がセントラルやミッドレベル/ピークに優雅に広い邸宅を構えたのとは対照的に、この狭い地区に大勢の中華系移民が詰め込まれたせいで、エリアはスラム化し、住環境も超悪化しました。水道や下水などのインフラもままならないこのスラム街では、豚などの家畜まで飼われていたとのこと。

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今でも残るこの裏道、Water Lane (1) はその名の通り、当時はビクトリアハーバーまで続く小川が流れていた小径だったとのこと!現在は地面にちょっとだけ窪みがあるのみ。当時は、この小川に沿ってスラム街が形成され、汚物や下水などが直に垂れ流されていました。

そんな最悪な住環境の中、1894年に世界を震撼させるペストがこの場所から発生したのでした。太平山から始まったペストは、その後30年にもわたり香港中、世界中に広がり、全世界で1200万人以上もの命を奪ったとのこと!

そんな状況を見かねたイギリス植民地政府は、伝染病の発生を防ぐため、スラム街を一婦し、エリア全体を再開発することに決めたのです。今残る太平山の街の骨格はこの時の再開発に整ったと言えるでしょう。

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その植民地政府の再開発の名残りとして、まず挙げられるのがBlake Garden (2)。1905年にオープンした、香港内で初めて中国系の住民のために設けられたパブリッックパークです。たった100年ちょっと前まで、こんなにもはっきりと西洋人と東洋人の区別がされていたなんて、、、。それはともかく、この公園は太平山の住環境の改善のために、住民の憩いの場として導入されました。緑豊かなBlake Gardenは、今でもリラックスしたこの街の雰囲気に貢献しています。

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公園の門には、ペスト発生のグランド・ゼロを記録したエンブレムが飾ってあります。

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公園の中に入ると、見てください〜、この無数に枝割れした立派なバンヤンツリーを〜。エネルギーがみなぎっています!

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このBlake Gardenからも見えるレンガ造りの洋館のような建物も、植民地時代の名残り。
1906年にペストの再発予防や細菌伝染病のリサーチのために建てられた建物で、現在は医学博物館 (3)として一般に公開されています。建築好きの方は建物を見学するだけでも見応えあり。この建物は、地元の老舗建築事務所、Leigh & Orangeによる設計。現在でも香港大の新校舎や地下鉄の駅などバリバリにモダンな建物を設計している建築事務所です。100年前はエドワード調の西洋建築をデザインしていたなんて、驚き〜!

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正面玄関は、Caine Lane側にあります。左右対称の堂々とした門構え。

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もともと、医学の研究所として建てられたとは思えないほど、装飾に富んだ素敵な建物。バルコニーが
気持ち良さそう〜。

建築自体に興味がない方は、館内の展示をお楽しみ下さい〜。結構、刺激の強い、医学系の展示を行っています。

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辮髪の医学者たちによる実験模様。

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水疱瘡の予防接種を牛に与えているところ。大丈夫です、腹を切ったりとかしてません〜。

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昔の手術台。実際使われていたところを想像すると、ちょっと怖い。。。

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香港らしく漢方薬のカウンターも、当時のままのディスプレイ。

館内には、建物についての説明や、ペストが発生した頃の太平山エリアの様子なども詳しく紹介していました。

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1910年代、建物が完成した当時の写真。周りの環境の変化に愕然〜。完全にヨーロッパな景色!

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ちなみに、現在はこんな感じ〜。

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こちらは、1870年代の太平山エリアの様子。左下の2〜3階建ての住宅が密集している箇所が太平山。ほとんど、道がないぐらいに住宅で埋め尽くされています。ただでさえ、湿気の多い香港で、日の当たりの悪い路地は伝染病の温床だったことでしょう。

続いて、もう一つイギリス植民地時代の再開発の名残りとして紹介したいのが、Blake Gardenの西側、Pound Lane沿いにある公衆トイレ・兼シャワー施設のPound Lane Bath House (4)

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1904年に建てられたこの施設は、当時の香港で唯一、男女のために造られた公共入浴施設でした。当時の住宅はお風呂はもとより、水道もろくに整備されていませんでした。植民地政府はこの施設の導入により、地域の衛生レベルの改善を図りました。オリジナルの建物は残っていませんが、100年経った今でも同じ場所に公衆トイレとシャワー施設が残っています〜。
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本当は現在の太平山街の魅力を伝えたかったのですが、、、また、長々と余計なことを書き過ぎてしまいました。

まだまだ、太平山エリアの紹介は続きます〜。