モンコックにあるビバリーヒルズ

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モンコックに香港のビバリーヒルズと呼ばれる住宅街があるのをご存知ですか?

モンコック・イースト駅から徒歩5分ほどにあるその場所は、まさに都会の中にあるオアシス。緑で生い茂った街路には、白亜のコロニアルスタイルの豪邸が並ぶ、、、そんな現実離れした場所が九龍半島のど真ん中に存在するのです。

その場所の名は、Kadoorie Hill(カドゥーリー・ヒル)。

都会から隔離された陸の小島

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カドゥーリー・ヒルは、北は九龍糖、南は何文田と、2つの高級住宅街に挟まれた、広さ8ヘクタールほどの丘状のエリアを指します。この丘は四方を幹線道路と線路に囲まれているので、モンコックにありながら、周りの市街地から切り取られた孤立した地形となっています。

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カドゥリー・ヒルへの入り口は、Argyle Street と Prince Edward Road の2箇所のみ。Argyle Street からは、左手の坂道を進みます。

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東側に走るWaterloo Road とはかなりの高低差があり、カドゥーリー・ヒルの中を伺うことはできません。右手の崖の上には、周りの市街地とはかけ離れた、別世界が広がっているとは想像もできません。

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モンコックのメインストリートから坂道を登り、カドゥーリー・ヒルに足を一歩踏み入れると、そこには緑が生い茂る邸宅街。今まで聞こえていた車の音が消え、鳥のさえづりが聞こえ始めます。

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カドゥーリー・ヒルの中でも、丘の中心部にあるKadoorie Avenue と Barga Circuit と呼ばれる、2つの道沿いに古い邸宅が並びます。香港島にもピークやリパルス・ベイのような庭付きの豪邸が並ぶ住宅街はありますが、このカドゥーリー・ヒルは別格と言われています。それは、香港島の2つのエリアには常に不動産の売買が行われているのに対して、カドゥーリー・ヒルでは年に一度、空き家が出ればいい方だとか。ここは新参者をなかなか受け付けない、それほど格式高い場所と言えます。

由緒あるカドゥーリー家によって開発された住宅街

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カドゥーリー・ヒルの発展は、その名前からもわかるようにユダヤ系の名家、カドゥーリー家が大きく関与しています。ちなみに、カドゥーリー家とは、戦前に上海で財を成し、香港ではペニンシュラホテルやCPL中華電力などの経営に携わる大富豪一族。イギリス植民地時代にはナイトの称号を授かった由緒ある家系です。

もともとは、岩肌が剥き出しで何もなかった丘を、カドゥーリ家系列の建設会社が購入し、1930年代に住宅地として開発を始めました。そして、戦争を挟んで、1950年代までに、Kadoorie Avenue と Barga Circuit 沿いの8ヘクタールの土地に86戸の庭付き住宅と全39戸のマンションを完成させました。住宅の床面積は約300〜600平米を超え、ほとんどの家に2つ以上のパーキングスペースと大きな庭がついているとのこと。庭にはプールや池のあるお宅もあるそうです。香港の中心部では考えられない規格外の大きさ!そして驚くことに、これらの住宅は現在も同じ場所に、同じ区画で、住宅として残っています〜。

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↑1930年当時のカドゥーリー・ヒル。下の直線道が、かつてのArgyle Streetで、上にカーブしている道がWaterloo Road。開発前は、樹木もろくにない岩山のような敷地でした。

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↑現在のカドゥーリー・ヒルを、同じアングルから。長い歳月をかけ、緑の生い茂る住宅街に発展しました〜。

当時最先端の建築スタイル

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開発当初から、カドゥーリー・ヒルは「Garden City」というモットーのもと、自然豊かな景観作りを目指していました。それは、このエリアの住宅密度に表れています。敷地いっぱいに建物を建てるのではなく、余裕を持って庭のスペースを残すことで、緑が街じゅうに溢れています。敷地に余裕を残すなんて、香港では最高の贅沢!なにやら、カドゥーリー・ヒルには2000本以上もの樹木が植えられていて、これらの木のおかげで、ここだけ周りの市街地より2度ほど気温が低いのだとか。

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1950年代までに建てられた住宅は、当時の最先端のデザインである、ストリームライン・モダンと言うスタイルで設計されています。機能性を重視したバウハウスの影響を受けつつも、アール・デコのような曲線を使った、遊び心もあるスタイルです。

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Kadoorie Avenue と Barga Circuit 沿いには開発当初のままの建物と街並みが残り、この場所だけ時代から取り残されているかのように感じられます。モンコックの繁華街に近いこのエリアが、再開発を免れているのには奇跡的〜。

カドゥーリー・ヒルの住人

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このエリアが当時の姿を色濃く残しているのには驚くべき理由があるのです。それはなんと、このエリア一帯が今でもカドゥーリー家の所有地だからなのです〜!ということは、Kadoorie Avenue と Barga Circuit 沿いにある86戸の住宅と全39戸のマンションは全て賃貸物件なのです!九龍半島のど真ん中にあるこの膨大の不動産が一つの家族に属するなんて、、、その潜在価値は、想像をはるかに超える金額のことでしょう〜。それはともかく、エリア一帯が一人の所有者によりコントロールされているので、ここにはとても統一感のある美しい街並みが残っているのです。築60年を超える建物もありますが、美しくメインテナンスされており、長年丁寧に住まれてきたのがわかります。

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全て賃貸物件ですが、カドゥーリー・ヒルの豪邸には、代々そうそうたる住人が名を連ねてきました。イギリス植民地時代には軍の幹部、戦後は名高い企業のトップやオーナー家族、そして1990年代に入り、広東ポップや映画スターがここに住んでいました。レスリー・チャンやアンディー・ラウもここに家を借りていたとのこと。戦時中は日本軍にも使用されていたそうです。香港の歴史を調べていくと、日本軍の存在が随所に見られます。

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この住宅街の創設者、カドゥーリー家もKadoorie Avenueの24番地に長年、家を借りていました。

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カドゥーリー・ヒルの住人はほとんどが10年以上の長期入居者で、中には60年以上も続けて、同じ家に住んでいる家族もいるとのこと。このような豪邸ならば、引っ越したくなくなるはず〜!

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カドゥーリー・ヒル一帯はカドゥーリー家個人の所有地なので、この丘全体を隔離して、ゲート付きの高級住宅地にすることもできたことでしょう。しかし、この緑豊かな素晴らしい環境を一般市民にも楽しんでもらいたいという、名門一族のとてもノーブルな心遣いより、住人以外でも自由に散策できるようになっています。カドゥーリー家の言葉を借りると、急発展を遂げる九龍の街に「肺」のようなものを作りたかったと言っています。ここは基本的には住宅街なので、特別に見るものがあるわけではありません。しかし、まさに都会のオアシスといえる、この場所の存在そのものが現在の香港にとても特別と言えるでしょう。

以上、モンコックにあるビバリーヒルズの紹介でした〜。
僕が散歩に行った時、道を歩いている人をほとんど見かけませんでした。おそらく、ここの住人はいつも運転手付きの車で移動しているのでしょう。住宅街とういう、とてもプライベートなエリアなので、部外者が散歩するのは、正直ちょっと申し訳ないような気がしました。CCTVも随所にあり、警備員の方も巡回していました。訪問の際は、くれぐれも慎んだ行動を〜。